白銀のカルマ
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

薬はちゃんと量も守り、毎日飲んでいたが更にひどくなる時があった。

そもそも体にあっていないのかもしれない
が、途中で辞めれば症状がひどくなることを深く理解していたので何があっても辞めるつもりはなかった。

この日はあいにく正臣の病状を誰よりも理解する和巳が家を空けていた。

彼は定期的に来る正臣の発作への耐性があるので、基本的に放置なのだがそんな事情を全く知らない優一はその物音を聞くなり部屋にすっ飛んできた。

そして正臣が一番恐れている事態が起きた。

「あぁっ!!!」

ワイシャツの肩の部分が赤く滲む。

肩に刺さったカミソリを見てわなわな震えながら、正気に戻る正臣。

後数mm刺さる場所がずれていたらと考えただけで背筋が凍った。

「ごめっ…、ごめんっ……ごめんなさいっ……」

物凄い勢いで平謝りしたが、優一は顔色一つ変えず笑ったままで、その有様に不気味ささえ感じた。

しかしそんな感情を抱いている暇はなく、慌てで棚から救急箱を取り出すと、手当に必要な物を全て取り出し、早急に応急処置を施した。

「ごめん……本当に痛かっただろ?」
「………はい。少し」

怪我を負わせておいて言うことではないが、本当にピアノ奏者の命の次に大切な指が傷つかなかったことは不幸中の幸いだった。

ちなみに彼は応急処置の間も、念のために行った病院の行き帰りの間も、俺を一度も責めたりはしなかった。

普通、人が他人に対してここまで寛容になれるはずがない。

俺の知ってる人間という〝イキモノ″はもっと冷たい。

調子の良いことだけ言って信用させ奈落の底へ平気で引きずり下ろす。

すぐに消えてなくなるような脆い口約束ばかりだ。

この時は、まだ彼のことさえも信用出来ていなかった。




















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