白銀のカルマ
「あ、あ、これは。これは奥野さん……」

「お久しぶりです。稲倉先生。あのところで息子はいらっしゃいます?」

それは約一か月後の出来事だった。

優一の母・幹枝がいつになく険しい顔で稲倉家にやってきたのだ。

『知らない』と白を切るも、いつもの癖で不自然に目が泳いでしまう。

挙動不審な和巳に全て自白させるため、じりじりと詰め寄る母。

幹枝本人が、この店に優一が出入りしているのを目撃したと言うのだ。

「……息子からは知人のピアノ教室の助手をやってるって聞いたんですけどね。こんな如何わしいバーで働いていただなんてショックですわ」

また人づてから聞いた不確かな情報ではなかった。

音信不通になった息子の所在を興信所に調査を依頼していたのだ。

バーから優一が出てくる瞬間を捉えた写真を突きつける。

「……こんな動かぬ証拠があれば言い逃れなんて無理でしょう?」

断崖絶壁まで追い詰められた和巳は何の言い訳もできず完全に劣勢となった。

それをいいことに、図々しく家に上がり込むと息子の名前を呼びながら部屋のドアを一つ一つ開けていく。

「優一!優一!いるんでしょ!出てきなさい!」

「……ちょっ……辞めてください。お母さん……」

和巳の静止を振り払い部屋を次々と開けていく母。

そして角部屋のドアノブを勢い良く回し引いた瞬間、二人の悲鳴が廊下中に響き渡った。

「キャー!!!」

「いやぁああああ!!!」


そこには二人の常識を超えた光景が広がっていた。

何と半裸でベッドに横たわる青年二人と目が合ったのだ。




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