白銀のカルマ
「さ、散歩……」

『そう』

散歩で外に出たと咄嗟に嘘をついた。

しかし母がそれ以上何か追及してくることはなかった。

さては僕が昨日家を空けたこと自体知らない?

一言二言会話を交わしただけで母が『何も知らない』と判断するのは無理があったが、やはり母は僕が昨夜何をしていたか
全く知らなかったようだった。

それが分かった途端、緊張が解けていく感覚があったが、こんな時間に電話をかけてくるとは一体何事だろう?

それに少し涙声のような気もする。

事情は詳しく分かっていなかったが、ただならぬ雰囲気がこちらにも伝わってくる。

覚悟して母から発せられる言葉に耳を傾けた。

『さっきね……母が亡くなったの』
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