幼な妻だって一生懸命なんです!

「親父もお袋も役員をしている。家族みんな高山百貨店の関係者だ」

泳いでいた目は私へとしっかり止まっていた。
私は紅茶のカップをそっと口元へと運び、ゆっくりと一口飲んだ。

「驚かないのか?」

「少し」

「興味なし?」

「戸惑ってます」

勘違いしないで欲しい。
彼が御曹司だろうが、ただの会社員だろうが、私は目の前にいる長瀬さんが愛おしく好きになった。それを彼にちゃんと伝えたい。わかってほしい。

表向きは仕事ができて隙のない人間に見られているが、二人でいるときにはすぐに拗ねたり、不安になったり可愛い面を見ている。
それを含めても、私にとっては可愛くて素敵な人なのだ。

「戸惑ってるって…こんなことを、今更話されたことが?まさか、結婚をやめるとか」

少しくらい意地悪を言ってもいいと思ったのに、彼がこうして不安げに焦るところを可愛く思ってしまうのだ。

「な、そうなのか?」

下を向いて何も言わない私を下から覗き込む。


「ふ、ふふふふ」

我慢ができずに笑い声が響いてしまった。

「おい!」

まだ笑って肩が揺れている私の腕を掴んで、動きを止めようとした。
少し強い力が入ったので、彼の瞳をみつめると安堵の色を見せる。

「泣いてるのかと思った」

「泣いていません。どうして泣くんですか?」

「いや、黙っていたから」

「確かにもっと早く言ってくれてもよかったかなとは思います」

「言うタイミングがあるだろ」

「もっと前にもありましたよね」

「言うのが怖かったんだよ」

もう、この人は…どうしてこんなにも見た目とのギャップがあるのでしょう

「事実を知って私が怖気付くと思ったんですか?」

「いや、まぁ。さっき、反応も薄かったし」

「反応?」


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