幼な妻だって一生懸命なんです!
「だいたいの女性が大げさな反応をする」
「例えば?」
「学生の頃は付き合ってるとなんでも買ってもらえるとブランド物のバッグや靴をねだられたし」
「当時は隠していなかったんですか?うちが高山グループだって」
「言わなくても幼稚舎から私立にいたからな、周知のことだった。いとこも同じ学校にいたし」
「会社では目立っていましたけど、高山グループの人間だってこと知らない人が多いのでは?」
「人事に口止めしたし、特別扱いはしないと言うのが入社時の希望だった。本当は別の会社に内定が決まっていたんだ。爺さんと社長に押し切られた」
「そうなんですね」
「過去の苦い経験で高山グループの人間だって言いそびれた。悪かったな」
「いえ、」
「でも、そんな薄い反応のやつは初めてだな」
「なら、さっき私が、高山百貨店の御曹司なんですね!と飛び上がったらどう思いますか?」
少し考えて長瀬さんは言った。
「複雑かも」
「ですよね。私が長瀬さんのお家のことを知った途端、大喜びしたら変じゃないですか」
「うん」
「そりゃ、お金があることに越したことはありませんが…」
「正直だな」
「私は長瀬要という人を好きになったんです」
調子に乗って、変な告白をしてしまった。
私が「あっ、」と口を押さえると、長瀬さんは顔を真っ赤にして照れていた。
「お前なぁ、恥ずかしくもなく、よく…、まぁ、いいけど」
照れて素っ気ない言葉を吐き、コホンと小さく咳払いをする。
すぐに長瀬さんの視線に捕まった。
「俺も、美波が好きだ」
彼の瞳が揺れる。
二人の間の温度が上がり、お互いを求め合う微かな駆け引きが漂う。