幼な妻だって一生懸命なんです!


十一月吉日
交際二ヶ月を経て、今日、私は長瀬美波(ながせみなみ)になる。
結婚を前提に正式にお付き合いを始めた直後から、長瀬さんが結婚準備を進めていった為、
結婚式当日まで何のアクシデントもなく順調だった。
順調すぎて怖いくらい。

長瀬さんが私の両親に挨拶に来た時も、両家の顔合わせも、式の日取りも、何もかもがまるで計画表でもあるかのようにスムーズだった。

長瀬さんのご両親への挨拶は、両家の顔合わせで済ませようと言われた時は反対したのだけれど、結局、私の職場に社長を始め、ご両親、そして会長までが個々に訪れ、私は制服のまま長瀬さんのご家族に顔見せをしたことになった。

長瀬さんの思惑通り、正式にご挨拶をしたのは両家の顔合わせの時だった。
その時、以前、聞いていた「兄貴的存在」という男性の姿は見えなかった。
社長のご子息、つまり要さんの従兄弟で海外に赴任中。
式には参列するだろうということだった

強いていえば、衣装選びだけに時間がかかった。
長瀬さんが衣装合わせに来たのは自身の衣装を選ぶ最初だけで、あとはうちの母に付き添ってもらい、白無垢、色打掛、ウェディングドレスを決めるのに、結局、私は四回も衣装選びに式場へと足を運んだのだ。

お色直しは一回でもよかったのだけれど、高山グループへ嫁ぐと言うことは、来賓も一般の結婚式と人数が違う。
まだ友人が結婚していなく結婚式に参加したことは一度もない。
独身の菜々子さんは「私が参考にならなくて悪かったわね」と笑っていた。

当事者の式ならなおさらわからない事ばかりだから、長瀬さんにほとんどを任せていた。
長瀬さんは、まるで業務のように準備をこなしていた。

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