幼な妻だって一生懸命なんです!
私が倒れてから一週間が経った。
あれから要さんは、今まで以上に私を過保護にする。
倒れた翌日から、一日三回以上は必ず私の職場を確認しに来る。
そんな要さんに、私は一ノ瀬由香さんから言われた衝撃の言葉を聞くことができぬままだった。
臆病になっていた。
「長瀬、私がいる時は大丈夫だから」
半ば呆れ顔の菜々子さんに申し訳なく思う。
菜々子さんだって、いつも目をかけてくれている。
あれから由香さんは現れていない。
「川西、いつも悪いな」
要さんは私を確認すると、菜々子さんに声をかけて自分の仕事場へ戻って行く。
「ごめんなさい、菜々子さん。少し過保護過ぎますよね」
私が困り顔で菜々子さんにお詫びをすると、菜々子さんは首を横に振る。
「これくらいがちょうど良いのかも。あれから由香、来ないでしょ?」
「はい」
この日、私は早番で要さんはの定時より少し早くあがった。
外で用事を済ませると、ちょうど要さんの退勤時間が近づいていた。
一緒に帰りたいな。
要さんへメッセージを入れ百貨店へ戻る。
LINEに入れたメッセージはなかなか既読にならない。
仕事、まだ終わらないのかな。
あと五分も歩けば百貨店へ戻れる。
少し歩調を緩めながら、ふと視界に入った光景に目を疑う。
要さん…
大通りに面したおしゃれなカフェレストラン。
笑顔の要さんが目の前にいる小さな男の子にプレゼントのような包み紙を渡している。
男の子ははしゃいでそれを受け取り、すぐに包み紙を剥がそうと必死になっている。
その男の子の横には、由香さんが嬉しそうに笑ってその様子を見ている。
まるで…家族だ。
誰にも言えず、封印していた黒い塊がゴロンと胸の中で転がる。
『私の息子、要に似てない?』
蘇る由香さんの言葉。
私は逃げるようにその場を後にした。