幼な妻だって一生懸命なんです!
翌朝、まだ眠っている私の枕元に要さんがやって来た。
彼は昨日ベッドには戻ってこなかった。
おそらくソファで寝ていたのだろう。
私も一睡もできずにいたから、彼の気配が近くに来たことはすぐにわかった。
なのに寝たふりをする。
こんな時、彼と同世代の女性だったらどんな対応をするんだろう。
寝たふりなんて、子供じみているとわかっていてもこうするほか、私にはできなかった。
「美波、朝一で会議があるから先に出る。遅刻しないようにな」
目をつぶったまま、背を向けていた私の頭を撫でながら、優しい声が落とされる。
その声を聞いていると、昨夜、要さんを傷つけてしまった罪悪感に苛まれる。
私が眠っていないことなんてお見通しなんだ。
手が頭から離れ、寝室のドアが閉まる。
数秒も経たないうちに、玄関のドアも閉まる音がした。
バサッと掛け布団を捲り上げ勢いよく起き上がり、玄関まで走り出した。
結婚してからまだ一週間も経っていない。
顔を合わせない朝は初めてだ。
玄関のドアノブに手をかけたけれど、推し止まる。
追いかけてどうするの?
そもそも、こんな格好で外に出られるわけないじゃない。
自分の行動が子供じみていて、情けなくて仕方がない。
朝ごはんだって、毎日作るって決めたじゃない。
祖母に子供の頃から言い聞かされていたことがある。
「仕事で疲れている家族には、美味しいご飯を食べさせてあげるのよ」
母もまた家族がどんな状態でも美味しいご飯を欠かさず用意してくれていた。
父が朝早く出て行くときも、どんなに遅く帰って来ても、母は「何か食べる?」といつも聞いていた。
そんな母や祖母に育てられたせいか、料理は家事の中で一番得意だ。
自分から家政婦さんはしばらくお休みしてもらってくださいと要さんに頼んだくせに。
食事を出さずに出勤させてしまうなんて情けない。
とにかく仕事だけはきちんとしよう。