クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


「お兄ちゃん、それ何歳のときの話? そんな昔の約束もう覚えてないよ」

 私がそう言うと、兄は「ひどい。俺の大切な思い出なのに……」とつぶやき心臓を両手で押さえて畳の上に倒れた。

 すると今度は父が震える手でスマホを取り出し、画面をこちらに見せる。

「いや、遙の夢は『お父さんのお嫁さん』だもんな? 幼稚園の卒園アルバムにちゃんと書いてあるもんな?」

 そこには私の卒園アルバムの写真が表示されていた。

 こどもらしい字で確かに『しょうらいのゆめ おとうさんのおよめさん みやしたはるか』と書いてある。

 もう二十年近く前の卒園アルバムをわざわざ写真に写して大切にスマホに保存してある父の親ばかぶりに頭が痛くなってきた。

 するとそのときふすまが開いた。
 そこに立っていたのは母だった。

< 55 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop