極上旦那様ととろ甘契約結婚
「あ、そう……だよな。さっきだって驚いてたんだし……うん、そんな都合よく行かないよな。ごめん。あ、それから、あんな風に声掛けてごめん」

深々と頭を下げる修吾さんに私も慌てて頭を下げた。

「いえ!私こそ、全然思い出せなくて……今も修吾さんから話してもらってるのに新しく思い出したりしなくて、すいません」

ドラマや映画ならここでヒロインの脳内では都合の良い走馬灯が駆け巡って全ての記憶を取り戻すシーンだろうに、私の頭の中は何も思い出していない。

自分の脳味噌の不甲斐なさに申し訳ないのは本当なのに、互いに「いや、こっちこそ」と頭を下げあう状況がおかしくて、ついくすりっと声が漏れてしまった。
と、向かいでもククッと抑えきれない笑い声がする。

「お互い謝るのは、やめにしようか。もう十年も前の事だし」

「はい。嫌な記憶じゃないですし」

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