夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「あ……いえ、すみません。そういうつもりでは……」
「で、これ。あなたのですか?」
特に気分を害した様子も見せず、男性は持っていたものを見せてくる。
手のひらにころんと置かれたそれは、私のイヤリングだった。
(落としてたこと、全然気付かなかった)
耳に触れると、確かにない。
この人混みに圧倒されてそれどころではなかったからだろう。
「ありがとうございます。私のものです」
受け取ろうとすると、なぜか手を引っ込められる。
「あの……?」
「お礼にちょっと相手してくれたりしません? 話し相手がいなくなって寂しいんです」
まったく悪びれることなく言われたせいで、「やっぱりナンパじゃないか」というツッコミが遅れてしまった。
が、しっかり顔には出てしまっていたらしい。
「そんな顔しないでくださいよ」
「……どこの社員さんか存じ上げませんが、仕事の関係者が集まった席でこういうことはよくないんじゃないでしょうか」
「わお、真面目だな」
降参、とでも言うように男性が両手を軽く挙げる。
「本当にそういうつもりはないんです。ただ、こういうのも縁かなーと」
そう言いながら、一応親切にイヤリングを返してくれる。
ありがたいとは思ったけれど、ここから逃げ出したくてたまらなかった。
(やっぱり男の人って……苦手だ)
相手がどんな人であるかはあまり関係ない。
『男』というものに近付きたくないだけで、この人は悪くなかった。
「交流も兼ねているパーティーですし、普段の仕事の話なんかを聞かせてくれると嬉しいんですが」
断り方に悩んでいると、更に攻め込まれる。
「で、これ。あなたのですか?」
特に気分を害した様子も見せず、男性は持っていたものを見せてくる。
手のひらにころんと置かれたそれは、私のイヤリングだった。
(落としてたこと、全然気付かなかった)
耳に触れると、確かにない。
この人混みに圧倒されてそれどころではなかったからだろう。
「ありがとうございます。私のものです」
受け取ろうとすると、なぜか手を引っ込められる。
「あの……?」
「お礼にちょっと相手してくれたりしません? 話し相手がいなくなって寂しいんです」
まったく悪びれることなく言われたせいで、「やっぱりナンパじゃないか」というツッコミが遅れてしまった。
が、しっかり顔には出てしまっていたらしい。
「そんな顔しないでくださいよ」
「……どこの社員さんか存じ上げませんが、仕事の関係者が集まった席でこういうことはよくないんじゃないでしょうか」
「わお、真面目だな」
降参、とでも言うように男性が両手を軽く挙げる。
「本当にそういうつもりはないんです。ただ、こういうのも縁かなーと」
そう言いながら、一応親切にイヤリングを返してくれる。
ありがたいとは思ったけれど、ここから逃げ出したくてたまらなかった。
(やっぱり男の人って……苦手だ)
相手がどんな人であるかはあまり関係ない。
『男』というものに近付きたくないだけで、この人は悪くなかった。
「交流も兼ねているパーティーですし、普段の仕事の話なんかを聞かせてくれると嬉しいんですが」
断り方に悩んでいると、更に攻め込まれる。