あの日の空にまた会えるまで。


ーーーーーー

指定された店に着き、私は扉を開けた。開けた瞬間から聞こえるガヤガヤとした声と感じた雰囲気に後ろにいる悠斗が言う。

「うわ、めっちゃ盛り上がってんじゃん」
「貸切だし、春ちゃんが30人くらい来るって言ってたよ」
「もうある意味の合コンだな」

扉を開けた音に反応したのかひょこっと顔が出てきた。もう見慣れたその顔に自然と笑みが出る。

「あ、葵ちゃん!!こっち!」
「春ちゃん」

春ちゃんに呼ばれるがまま、悠斗とそこに向かう。

真央はバイトが重なってしまって来れなかった。運良くバイトもなく予定もなかった悠斗を誘い、交換大学生とその友だちが集まる大人数の集まりに参加しにきたわけだけど。

あまりの大盛り上がりと人数に埋もれそうになる。

春ちゃんの隣に腰を下ろす。悠斗も私の隣に腰を下ろした。

「飲み物何にする?」
「俺コーラ」
「じゃあ、オレンジジュースで」

どうやらこの集まりは1年だけではないらしい。交換大学生は4年生までいるため、大学4年の人たちも大勢いるみたいで、お酒を飲む人もいる。もちろん未成年はお酒禁止だ。

そこを徹底するため、お酒を飲む組と飲まない組を個室で分けているらしい。間違えてお酒を飲んでしまうことだってあるしね。だから自然と私と悠斗は飲まない組の部屋。春ちゃんも同じ1年生で未成年なため飲まない組だ。

「ちゃんとしてるんだねー」
「せっかくの他大学との交流じゃん?なにか問題あったら大変だからって幹事さんが念押ししてたよ」
「まぁ、何かあったら大問題になるな」
「店の人たちにも迷惑かけないようにって言ってた」
「どっちかと言うと酒飲めない俺らじゃなくて、酒飲む組が心配だけど」
「悠斗、聞こえるよ」
「…はいはい」

その途端、後ろの大部屋から大きな声が聞こえた。

かんぱーい!!と大きな声で乾杯の音と声。

これは本当、悠斗の言ってることあながち間違いじゃないな…と苦笑した。







「葵、お前大丈夫?」
「何が?」

数時間経ったころ、コーラが入ったグラスを持って戻ってきた悠斗が尋ねてきた。

「顔が疲れてんぞ」

時間が経つに連れて、悠斗もそうだけど皆はグラスを持ってあっちらこっちらと移動を開始する。春ちゃんも今は隣にいない。先ほどまで向こうの方で盛り上がっていた自由人でフレンドリーな悠斗も私を気にかけつつ常に忙しなく動いていた。

私はといえばこういう場ではいつも真央について回ってたし、入れ替わり立ち替わり何もしなくても人がやってくるため移動することなく、談笑を繰り返しながら、その場でちょびちょびとジュースを飲みながらお箸を進めていた。

「ほんと疲れた」
「帰る?」
「……とりあえずお手洗い行ってくるよ」
「おー」

周りに気遣いながらそっと部屋を出た。向かいの大部屋ではお酒を飲む組が盛り上がっている。お手洗いは…とキョロキョロしながら廊下を進む。

そしてお酒を飲む組の大部屋からはみ出た誰かの鞄についているものに思わず足が止まった。


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