擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
一緒に住み始めてすぐにID交換をしたけれど、メッセージを送るのはこれが初めてである。
──彼は今忙しいかな? すぐにスマホを確認できないかも……。
【今日は何時になりそうですか?】
ちょっぴり緊張しながら、人気キャラの愛ネコスタンプ『待ってるニャン』付きで送ってみると、ほどなく既読になった。
【あと一時間くらい。終わったら即行帰る】
「うわ、早いっ」
吹き出しが現れたのは、既読表示からわずか二~三秒のこと。
彼の文字打ちの速さに圧倒されつつ、『分かったニャン』の愛ネコスタンプを送った。
すぐに彼からも【了解!】のスタンプが送られてくる。
「かわいい! チワワのスタンプだなんて。なんか、雄大さんぽくないなあ」
彼の使用する動物キャラをイメージすれば、犬系ならば立派な立姿のオオカミ、ネコ系ならばスマートな肢体のヒョウになる。
それなのにとっても愛らしいチワワ。
そのギャップが、なんだかとても微笑ましくなって、胸の中が温かいもので満たされる。
おひとりさま歴数年間。好きな人とこんなやりとりをするなんて、ほんのわずか数日前までは考えてもいないことだった。
仕事を終えて暗いお部屋に帰って、晩御飯を食べて就寝までひとりで過ごす。それが当たり前のことだったから気づかなかったけれど、寂しい毎日だったなあと思う。
こうして帰りを待てる相手がいるのは、すごく幸せなことなのだ。