擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

「一時間……か。えっと、そうしたら、どうしようかな」

 ぶつぶつとつぶやきながらスマホで目的のものを検索し、亜里沙は笑みを浮かべた。

 準備をする時間を逆算すると、今すぐ取り掛かっておけばちょうどいい頃に帰って来る感じだ。

 亜里沙はプライベートルームに通勤バッグを仕舞って身支度を調え、いそいそと準備を始めた。

 彼の驚く顔を思い浮かべながら、スマホを片手に奮闘すること小一時間。仕掛けておいたタイマーが電子音を鳴らした。

「うん、そろそろいいかな?」

 ぷるぷるとした柔らかい部分に尖った軸を差し入れ、そのいい塩梅ににんまりした。

「うん、これ上出来じゃない?」

 なめらかな表面は凸凹もなく、とても綺麗に仕上がっている。

 この中に琥珀色の大きな宝石が二つ入っているのだ。おそらく、宝探しをするような気落ちになれる……はず。

 ──雄大さん、どう思うかな? きっとびっくりするよね。

 少し不安もある。

 亜里沙はとても良いと思ったのだが、彼は受け入れてくれるだろうか?

 反応の楽しみとちょっぴりの不安とで準備の手が止まり、しばらくそれを眺めていると、ふいに廊下の方から微かな物音が聞こえてきた。

 ──彼が帰ってきたんだ! 早くしなくちゃ!

 準備を再開してあたふたと動き回る亜里沙の背後で、ドアの開閉する音がした。

「おかえりなさい、雄大さん。もう少し待っててね。すぐにできるから」
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