擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
振り返る余裕もなく、準備をしながら声をかけるけれども彼の返事がない。
──先に書斎に行ったのかな。
不思議に思った亜里沙が振りむくと、視界がピンク色に染まった。
「え……これは、薔薇……なの? 雄大さん?」
彼の姿さえも見えないほどの大きな花束が、亜里沙に向けられている。
「これ、俺からの気持ちだよ。花屋に頼んで用意してもらったんだ」
花の美しさに見惚れるとともに、その量に圧倒されてしまう。
立ち尽くしている亜里沙の腕に、それはそっと預けられた。見た目通りにずっしりと重くて、まるでおおきなぬいぐるみを抱いているかのよう。
こんな素敵な花束、プレゼントされるなんて……胸が痛いほどに高鳴って、感激のあまりに声が喉に詰まってしまう。
ピンク色も一色ではなくて、薄い色と濃い色が混ざり合って絶妙なバランスにまとまっている。
いったい何本あるのかな。
そんなことを尋ねるのは野暮かな。
こんなときはどんなふうに言葉を返したらいいのかな。
感動に打ち震えてときめく胸を調えるように深呼吸をすると、甘い薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。
「ありがとう、すごくうれしい」
震える声でお礼を言って、なにげなくラッピングに視線を落とすと、花を包んだ和紙の間にカードが挟まれていた。
透けて見えるよう、絶妙な位置に配置されたそれには、亜里沙へのメッセージがつづられていた。