擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
身分的な差も生活様式の違いも、精神的にも物理的にも溝が埋められていないのだ。最初はいいけれど、きっと後々負担になってくる。
亜里沙が気にし過ぎなのだろうか。
普通はもっと簡単に考えるものなの?
『社長に合わせるのは簡単じゃない? 上品なふりをすればいいんだもん』
恵梨香の言葉が頭をよぎる。
彼女の言うように、もっと気楽に構えられたらいいのに、亜里沙にはできない。
なんだか申し訳なくて、そんなふうに思う自分も傲慢な気がして、思わず俯いた。
でも彼の真摯な思いに応えるには、亜里沙も真剣に受け止めて慎重に考えて答えをださないと駄目だと思うのだ。
そんな亜里沙の思いが伝わったのか、彼の手のひらがいたわるように背中を擦った。
「ああごめん。いくらなんでも、まだ早いよな。俺が焦り過ぎなんだ。しばらく擬似結婚にしようと提案したのは、俺なのに」
「ごめんなさい」
「いいんだ。でも、俺はこれからも、何度でも君にプロポーズするよ。それは覚悟しておいて」
「……はい」
抱擁から、言葉から、彼の愛情が伝わってくる。彼ほどの人に愛情を向けられて、うれしい反面、やはり戸惑ってしまうのだ。
──ほんとうに、私が妻になってもいいのかな……。
この先自分がどんなふうに変化していくのか。ふたりの生活を想像しようとしても、明確に見えないのだ。