擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「それで……今更だけど、亜里沙のエプロン姿はかわいいな。それに、いい匂いがするけど、なにか作ってくれてた?」
その言葉で亜里沙の意識は現実に戻った。
「あっ、そうでした! 準備の真っ最中だったの。雄大さん、もう少し待ってて」
彼は「それなら俺も手伝うよ」と言ったので、今日は待っててほしいと言って椅子に座ってもらった。
その方がサプライズ効果がある。
まあ、彼の九十九本の薔薇には到底かなわないのだけれども……。
「さあ、どうぞ」
「これ全部……きみが作ってくれたんだ」
ダイニングテーブルに並ぶのは亜里沙の手料理だ。食材も味付けも量も亜里沙の実家に合わせて作ってある。ただ一つを除いて。
「これはなに?」
興味深そうに指で示したのは、どんぶりほどの大きさの蓋つきの器だ。ひとり暮らしを始めたときに母から渡されたもので、亜里沙のアパートから持ってきた器である。
「……開けてみてのお楽しみ」
にこっと笑って見せると、彼も微笑みを返してくる。
「宝箱かな?」
彼の指が蓋に触れるのをドキドキしながら見つめる。
開けた瞬間、彼の動きが止まった。
──今なにを考えているのかな。
「ひょっとして、茶わん蒸し?」
「そう、茶わん蒸し」
「一般的なものより、大きいね?」
「うちの茶わん蒸しは、その量なの。変、かな?」