擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
亜里沙の実家では茶わん蒸しはメイン料理扱い。エビやホタテなどの魚介類を入れ、茶わんよりも少し大きいどんぶりで作るのが当たり前だった。
恵梨香にジョーク交じりで言った言葉は、小学生の時に亜里沙の家に泊まりに来た友人に言われたことそのままである。
今日はちょっとばかり違う食材が入っているのだけれど……。
「いや、びっくりしただけだよ。へえ、これが亜里沙の実家サイズか、いいね。俺の両親は海外で暮らしているし、今までこういう家庭的な料理を食べたことがないんだ。だからすごく新鮮だよ」
心底喜んでいるようで、少しホッとする。
だって問題はこの先なのだ。
「そうなると、具も違うの?」
問いかけてくる目は輝いていて、なんだかとってもわくわくしているようだ。ある程度は想像していたけれど、それ以上の反応である。まるで新しいおもちゃを与えられた子供のような……。
──意外に無邪気なのかも?
「あ、今回はね、具もだけど、味付けも実家とは違うものに挑戦してみたの」
「違う味?」
不思議そうに首を傾げた彼が茶わん蒸しにスプーンを入れる。
品よく掬って口に運ぶ様子を見つめる亜里沙の心臓は、はち切れんばかりに脈打った。
ぱくりと食べた彼の動きが再び止まり、亜里沙はおそるおそる尋ねる。
「ど……どう、かな?」
「うん、意外な味がする。でもなかなか美味しいよ。今流行ってるの?」