擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
そう言いながら彼のスプーンは止まらない。
表情も晴れやかでうれしそうで、作った亜里沙に気遣ってムリして食べているようには見えない。
緊張から解放された亜里沙も茶わん蒸しにスプーンを入れた。栗の煮汁を使用した上品な甘さが口に広がって、想像通りのおいしさである。
どうやら食の好みは大まかには合っているみたいだ。
「よかった。恵梨香から話を聞いて、おいしそうだなって思ったから。雄大さんにも食べてみてほしくて作ってみたの」
どんぶりの底から琥珀色の大きな宝石──栗の甘露煮が出て来て亜里沙の気分がますますあがった。
──うん、これ、すっごい成功してる!
自分でも単純だと思う。
「恵梨香さんって……たしか、ITの四つ葉薬品担当の子だね。営業部に彼がいる」
「うん、そうだけど……恵梨香のことはまだ詳しく話してないのに、よく知ってるね。びっくりしちゃった」
「社内のことはたいてい把握してるつもりだよ。必要な人材を適所におくのが俺の最初の仕事だから。うわさ話もそれが本当なのかも、正しく見極めてる」
思わぬところから会社の話になった。これはチャンスとばかりに、恵梨香に頼まれていたことを問いかける。
「業務改革するんですか?」
「形態が少し古いから、業務の流れがよくなるように手を入れるつもりなんだ。なにより無駄を省いてYOTUBAの業績を上げるのが目標だよ」