擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「端なら俺の宿の方が断然近い。観光客でにぎわう道を、そんな恰好で歩かせる訳にはいきません。顔も汚れていますし」

 顔が汚れていると聞いて、亜里沙は思わず顔を覆った。

 髪が濡れているのだから、お顔も汚れているのは想像できたことなのに、ちっとも気づいていなかった。

「ぶつかって汚してしまった上に、人に見られて恥ずかしい思いをさせるなんて俺には絶対無理ですから。このままあなたと別れたら俺が後悔します」

「でも……」

 その先の言葉を言えず、口ごもってしまう。

 何故だろう。言葉や口調はとても下出なのに、亜里沙を見つめる彼からは、有無を言わさない迫力が感じられるのだ。

 ──目が真剣だからなの?

「俺にお詫びをさせてください」

 強い意思をストレートにぶつけてくる彼の熱意に負け、亜里沙は言葉に甘えることにした。

「それで、あなたの宿はどこですか?」

「そこに見えるホテルです。徒歩二分もかかりませんよ」

「えっ、あそこなんですか!?」

 彼が指差したのは、白い外壁のリゾートホテル『リレリパージュ』だった。

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