擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
つんっとそっぽを向いて席を立つふたりを唖然として見つめるしかなくて、亜里沙も恵梨香もカフェを出ていくふたりを留める言葉を発せなかった。
「怒っちゃったね……」
やっと声が出たのは、YOTUBAに向かう道路を歩くふたりが見えたときだった。
「ごめん! 亜里沙。こんなことになるって、思わなかったの!」
「恵梨香のせいじゃないよ」
ぱんっと両手を合わせて謝る恵梨香に罪はない。
今まで亜里沙と一緒にランチを食べた子たちは普段の社長の話を訊きたがっただけで、頼みごとなどしてこなかったのだから、それ以外の目的があるなんて知る由もない。
でもこれからはこういうことが増えるのかもしれない。
──社長の妻になるからって、いろいろ期待してもらっても、困る……。
亜里沙は密かにため息を吐いた。
そして社に戻って席に着いた亜里沙の元に、明らかに愛想笑いとおもわれる表情をした経理課長が来た。
カフェでの出来事も相まって、なんだか嫌な予感がしてしまう。
「なんですか?」
「すまないけど、これ、きみからも社長にお願いしてもらえないかな」
なんらかの資料を差し出され、う……と喉の奥で声を詰まらせながらも受け取った。
──経理課長、あなたもですか……。
「これ、忘年会……ですか?」
「そう。総務課から話が来たんだ」