擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
先導する彼女について階段を登って行くと、フィットネスクラブや直営ショップを通り過ぎていき、客室のようなドアが並んでいる中の一室に案内された。
中は一見普通の部屋のようだったけれど、そうではなかった。
ベッドはなく、くつろげるソファや軽食を取れそうなテーブルと、大きな鏡付きのドレッサーがある。
「ここは?」
「こちらは、直営ショップのパウダールームでございます。お洋服はすぐにクリーニングいたしますので、まずはこちらにお着換えください」
彼女は白いバスローブを亜里沙に渡してくれた。
直営ショップのパウダールームか……。
通りざまにちらりと見た程度だったが、数店あるショップにはどれも、亜里沙もよく知っている高級ブランドの看板がかかっていた。
六つ星ホテルに入っているショップともなれば、当然とも言えるブランドばかりである。
おそらく、事情を知ったショップ側が親切心で貸してくれたのだろう。感謝の気持ちが込み上げてくる。
どのショップも亜里沙には手が出ないブランドではあるが、多分ハンカチくらいなら買えるだろう。後程ショップに寄ろうと決めた。
ワンピースを脱いで女性スタッフに渡すと、タオルなどのアメニティを案内してくれる。
「メイク道具も揃っていますので、シャワーの際にはお顔を洗ってくださいませ。後程別のスタッフが参りますので、それまでごゆっくりどうぞ」