擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
彼女が丁寧なお辞儀をして退室していくと、亜里沙はさっそくシャワー室に入った。
「そうだ。ここはどこのブランドのパウダールームなのかな……?」
ショップに寄ると決めたのはいいけれど、彼女にブランドを尋ねるのを忘れてしまった。
『直営ショップの』ということは、店舗ごとでなく、共同で持っていることもあり得る。そうしたらどこのショップに寄ればいいのだろうか。
う~んと悩む亜里沙の目に、アメニティとして置かれているシャンプーやボディソープのボトルが目に入る。そこにはブランドのロゴがデカデカと入っていた。
「……私の憧れブランドナンバーワンだ!」
というか、世の女子の半分以上は好きなブランドじゃないだろうか。
そのお高くてとても買えない、憧れのボディケアグッズが亜里沙の目の前に!
なんて心躍るシャワー室なの?
亜里沙は叫びたい気持ちを押しとどめ、興奮した面持ちでシャンプーボトルに手を伸ばした。
香りがよく肌触りも心地よく、亜里沙を天にも昇る心地にさせる。
衝突して驚き、珈琲を被って不快な思いをしたけれど、それがこんな幸せを運んでくるなんて。ラッキーなのか、そうでないのか。
──いや、これはラッキーでしょ。
高級リゾートホテルのロビーに入って、高級ブランドのアメニティを存分に使うなんて、平凡な亜里沙の人生ではこの先も経験できることではない。