擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
体を隅々まで洗った後、ボディクリームを全身に丹念に塗り込む。
いい香りに包まれてほくほくと幸せな気分でシャワー室から出た。
テーブルの上には、冷たいジャスミンティとスイーツが用意されている。
添えられたカードに書かれている店名は、著名なパティシエのいるフレンチレストランのものだ。
メモ書きに【スイーツをお召し上がりながら、お待ちください】とある。
クリーニングが仕上がるまで時間がかかるのだ。これを食べながら待てるなんて、至れり尽くせりだ。
渇いたのどを潤してスイーツを口に入れると、甘味が全身に染み渡って身も心も癒される。
落ち着いてくると、ぶつかってきた『コウサカ』という彼のことが気になりだした。
こんな高級ホテルに宿泊できるなんて、相当なセレブである。気を取られていたという電話は、とても大事な内容だったのではないか。
例えば、重要な取引とか。
亜里沙がスマホを差し出したとき、彼は迷っているように見えた。
本当は電話番号を覚えていたのではないか。もしくは、その場で簡単に調べる術を持っていたか。
でもそれをしなかったのは、きっと亜里沙のことを第一に考えてくれたからに違いない。
「ほんとに大丈夫だったのかな」
彼のことを慮っていると、ドアがノックされた。
「失礼いたします」
「はい。どう……ぞ?」