擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 え? という声を飲み込み、パウダールームの中に入って来る二名のスタッフを凝視した。

 彼女たちはそれぞれの手に数着の服を持って入ってくると、壁際に置かれたハンガーラックにかけている。

 ずらりと並ぶ色とりどりの服はすべてワンピースのようだけれど……?

「あの、これはいったいどういうことですか?」

「こちらはすべてコウサカさまにお選びいただきました。『全部あなたに似合うだろうから、決められなかった。気に入ったものを着てください』とのご伝言でございます」

「え、え、え? 選ぶんですか? どうして?」

 待つのは、クリーニングの仕上がりではないの? 今まで着ていたワンピースはどこに?

 狼狽えてしまって、疑問符ばかりが口からあふれ出る。

 それによく見れば、ラックにかけられたワンピースのタグには、アメニティと同じロゴマークが見えるではないか。

 ──全部高級ブランドの服じゃないの。私には分不相応過ぎる!

 亜里沙は笑顔を向けてくるスタッフに曖昧な笑顔を向けた。

 どうやって断ればいいのだろう。 

「あの~、とても素敵な服ばかりで、大変恐縮してます。だから私、自分の花柄ワンピでいいんですけど……」

 笑顔を崩さないスタッフの醸し出す高級ブランドオーラが強すぎて、だんだん語尾が小さくなっていく。
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