擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「雄大さんこそ。大事な私の旦那さまなんだもの。風邪を引かれたら困るわ」
ホテルの外に出ると、強い海風がふたりを襲った。それでもホカホカと温かいのは、互いに巻き合ったマフラーと?いでいる手のおかげだ。
「珈琲をかけてしまったのが亜里沙でよかった。出会えたことに感謝してる」
「私も。雄大さんに珈琲を掛けられてよかった。今すごく幸せだもの」
ふたりの足は自然に、あの日見た夕日の美しかった灯台へと向かっている。海沿いの道を歩いて行くと白い灯台が小さく見える。
「亜里沙は知ってる? あの灯台は恋人たちの聖地だってこと」
「え、知らなかった。夕日が美しいって有名だよって、小浜館の女将さんに聞いていたから」
「灯台の隣にあるオブジェに南京錠をかけて、永遠の愛を誓うらしいんだ」
「それなら……是非とも行きましょう! 鍵を掛けに!」
亜里沙が力を込めて彼の手を握ると、極上な微笑みとともに倍の力で握り返してきた。
「そう言うと、思ってた」
暑い盛りだった以前とは違い、灯台周りには人がまばらにいる程度だ。
灯台近くの売店で南京錠を購入し、亜里沙は彼とふたりで灯台の傍にあるオブジェに向かった。
たくさんの南京錠が並ぶそこに、彼とふたりでゆっくり鍵をかける。
かちゃりと小さな音を立てて嵌った鍵は、二人の愛の絆の深さを象徴しているようで、少々のことでは外れない強固さを持っている。