擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
怒涛の勢いとはこういうことか。
『気が変わらないうちに』とばかりに、急かされて着替えてドレッサーに座った。
亜里沙は鏡の中の自分が変身していく様子を呆然と見つめていた。
長い髪はふんわりアップにして、ブランドコスメを駆使してメイクアップされて、平凡な自分が見る間にセレブ仕様になっていく。
セールで買った木綿の花柄ワンピースだったのに。珈琲をかけられただけで、こんなことになるなんて……。
『リレリパージュ』に出入りするのに相応しいレベルまで格上げされ、亜里沙はスタッフたちがシンデレラの魔法使いに思えた。
──そしたら、彼は王子さま?
「とっても素敵ですわ。さあコウサカさまの元に参りましょう」
自分の身に起こっていることが現実でないような、ふわふわした気持ちでスタッフに案内されるまま彼の元に向かった。
彼はラウンジで珈琲を片手に本を読んでいる。
「お行きなさいませ」
亜里沙はスタッフに背中を押されて、気恥ずかしさを堪えながら彼の横に立った。
その気配を感じ取った彼が顔を上げ、亜里沙の姿を見てふわりと目元を緩める。
「思った通りだ……よく似合うね」
「ありがとうございます! こんな素敵な服を用意していただいて、その、なんて言ったらいいのか……」
「いやこれは当然のことですから、気にしないで」