擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「でもこれは私が着ていた物よりも、数倍も素敵な服なんです。だから、服のお礼をさせてください」
価格差がありすぎて、このままではどうにも落ち着かない。
亜里沙がぺこりと頭を下げると、彼は首を傾げて困惑したような笑顔になった。
「どうしても、というのなら……今夜の食事に付き合ってもらおうかな。ひとりじゃ味気ないと思っていたところなんだ」
「お食事……ですか」
「もしかして連れがいる?」
「いえっ、いません。おひとりさまなので。ただ、宿の食事をお断りしないといけないです」
「それは俺の方で手配しておくから。あなたの名前は?」
「……河村亜里沙です」
答えると彼はすぐにラウンジスタッフを呼んで指示をして、亜里沙はスマートに彼と食事をすることになった。
亜里沙の想像していたお食事場所とは違っていた。
リゾートホテルのレストランでするものだと思い込んでいたのに、何故かタクシーに乗っている。
外はすっかり闇に染まっていて、彼と衝撃的な出会いをした昼間からは、ずいぶん時間が経っている。
パウダールームにこもっていた時間は、亜里沙の体内時計で感じたよりもかなり長かったみたいだ。
到着したのは、リゾート地から車で三十分ほどの場所にある、フレンチレストランだった。