擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 山と海以外はなにもない、このレストランだけがぽつんと建っている。

 観光客もあまり来ないような場所だけれど、駐車場には満杯に車が停まっていた。

 周りは街灯も少なくて景色も見えず、とても寂し気な場所だけれど、一歩入れば中は暖色系の証明で満たされていて、ムーディなジャズ音楽が耳に心地よく入ってきた。

「ご予約のコウサカさまですね。こちらへどうぞ」

 ラウンジでの会話後のわずかな時間で、彼は亜里沙の民宿への対応とレストランの予約までこなしている。

 スピーディで無駄のない手配振りは彼の有能さを垣間見せた。

 窓際のテーブル席に案内され、メニューを広げてみる。けれど、食べるものといったら庶民系なもの一辺倒の亜里沙には、フレンチの料理名を見てもピンとこない。

 メニューを凝視する亜里沙に対し、彼は「苦手な食べ物はある?」と聞いてきた。

「特にないです」

「それなら、俺に任せてもらっていいかな? ワインは飲める?」

「はい、お願いします」

 ここでも彼のスマートさを見せられて、彼は本当に王子さまではないかと思ってしまう。

「素敵なところですね。私は毎年小浜館に泊まりに来るんですけど、こんなレストランがあるなんて知りませんでした」

「俺は逆で、この辺りに来るのは初めてなんだ。だからホテルでオススメを聞いてきたんだよ。かわいい女性を口説くのに、いいレストランはない? って」


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