擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
冗談なのか、セレブ男性の女性に対する社交辞令的な台詞か。
どちらにしても、コウサカのような素敵な男性から言われれば、亜里沙の胸をときめかせるのには十分すぎる言葉である。
頬を染めて少しうつむき、首を傾げてはにかんだような笑顔を見せる。
「え……そんなこと」
なんて受け答えればいいのか、分からない。
出会ったばかりの彼の言葉を本気に捉えてはいけない。
そう思えども、恋愛経験の少ない亜里沙にとっては、男性からかわいいと言われたら単純にうれしくなってしまうのだ。
そんな亜里沙の様子を彼は柔らかい瞳で見つめている。
彼がオーダーしてくれた料理は海の幸をふんだんに使用したコースで、頬が蕩けるように美味しい。
ワインのアルコールが回ってくると亜里沙もちょっぴり饒舌になり、学生時代に初めてこのリゾート地に訪れたときのことを語った。
「それからもう六年間、毎年小浜館に泊まってるんです。素敵な場所がいっぱいあるんですよ」
「俺は海外に出るのが主で、最後に旅に出たのは大学を卒業したとき。それから八年間は仕事ばかりでまとまった休暇を取ったことがなかったんだ。今回は無理矢理というか、社の者がリゾートホテルを予約してくれたから。それで来たんだ」
大学卒業してから八年──ということは、彼は三十歳。亜里沙よりも二歳上だ。