擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 はるか遠い過去に一度あるかないかの経験を引っ張り出しても、彼の醸し出す上品な大人の色気には、誰もが遠く及ばない。

『かわいい女性を口説く』

 あの言葉が本気に思えてくる。

 けれど駄目だ。どう考えても彼とは住む世界が違うのだから、恋に落ちたらいけない相手なのだ。

 このまま雰囲気にのまれないよう、ときめいている自分の胸をごまかすように亜里沙は話しかけた。

「コウサカさんは、明日のご予定は決まってますか?」

「特に決めてないよ。急に来ることになったから、ここの情報を把握してないんだ。どうするかな……」

 少しお悩みのご様子だ。

 スマホもなければ、出先で不便な思いをすることもあろう。

 かといって部屋に閉じこもったままでは、せっかくの休暇がもったいない。

「それなら明日は私が観光案内をします。私の休暇は明後日までなので、一日お付き合いしますよ! あ、迷惑でないなら、ですけど……」

 勢いで言ってしまったことにちょっぴり後悔していると、彼はクスッと笑った。

「是非お願いするよ。きみのオススメスポットを知りたい」

「はい。どうぞお任せください!」

 その後も他愛無い会話をし、ワインがなくなりデザートも食べ終えると、亜里沙は小浜館まで送り届けてもらった。

 結局お食事も奢ってもらえた。亜里沙の知らないうちに支払いが済んでいたのだから、驚きである。

< 24 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop