擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 亜里沙は参道の入口にある神社名の描かれた石を示した。

「ここ、縁結びで有名なんですよ。恋愛だけでなく、友人関係とか、お仕事の縁とかもいいんです」

「仕事の縁? それはいいな」

「はい。私、就職活動しているときにここに参拝して『良い企業とご縁がありますように!』って一生懸命お願いしたんです。そしたら、今の会社からすぐに内定をいただけたんですよ」

「即効性があるんだな」

「はい、私の保証付きです」

「そんなに縁結びのご利益があるのなら、一緒に参拝しようか。今まさに丁度、俺の願いごとがある。行こう」

 さりげなく手を握られて、亜里沙の心臓がドキンと跳ねる。

「足元に気を付けないといけないから」

 たしかに幸の水神社の参道はゆるやかな坂道のため、足が滑りやすいかもしれない。でもこれくらいなら、大丈夫だと思うのに。

 そう思った途端、小石で滑って体がふらついた。手を取られていなければ、転んでいたかもしれない。

 ──うう、恥ずかしい。

「大丈夫?」

「すみません、どんくさくて」

 照れを隠すように笑って言うと、手を握る力が強まった気がした。

 彼の大きな手のひらからは優しさとぬくもりを感じる。そして男性としての逞しさも。

 知り合って間もなくて、まだそれほど親しくない。恋人でもない。だから振り払うこともできるけれど、それをしないのは彼のことを嫌いではないから?
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