擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 でもきっとこの思いは恋心ではないはずで……。

 亜里沙の内心の動揺をよそに、彼は平然と歩いている。

 純粋に危ないから手をつないでいるだけのように思えた。

 よこしまな心などなく、女性を大切にするジェントルマンみたいだ。

 間もなく本殿が見えてきて、手洗い水に到着すると同時に手が離された。

 境内にはたくさんの人がいて、とくに若い男女の姿が目立つ。

 参拝をしておみくじを結んだり、楽し気にお守りを選んだりしている。その誰もが仲睦まじいカップルに見えた。

 ──私たち、どんな関係に見えるのかな。

  そんなことを考えながら、水でお清めをする彼を見る。端正な顔立ちと女性への柔らかな接し方から思うに、恋のお相手は引く手あまたにいそうである。

 今回はたまたま一人旅だけれど、地元に戻れば素敵な彼女がいるのかもしれない。

 ──そうだよね。こんなかっこいい人に彼女がいないなんて、あり得ないもんね。

 亜里沙に珈琲をかけてしまって、その成り行きで一緒にすごしているだけなのだ。

 やっぱり彼に恋心を抱いてはいけない。連絡先を聞くなんてもってのほか、絶対に大やけどをする。

 この神社で、新しい出会いを願わなければ!

 思いを振り切るようにお賽銭を投げ入れ、彼と一緒に鈴を鳴らして二礼二拍手し、そのまま手を合わせて目を瞑った。

 ──素敵な方と良いご縁が結べますように! 素敵な出会いがありますように!

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