擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
最初は大手企業を狙ったのだけれど書類で落とされてばかり。年が明けてもまったく決まらなくて焦る中、ようやく面接までこぎつけられたYOTUBAに就職することができたのだ。
そんな苦労をしてきたのに、今更就職活動なんて考えるだけでもうんざりする。
「うう、それ、すごく怖いですね」
「だろ? 河村も目を付けられないように気をつけろよ」
「肝に銘じます」
亜里沙はデスク周りをチェックして可能な限りきれいにし、気持ちが落ち着かないながらもパソコンを起動させた。
午前中そわそわした時を過ごした経理課長は、チリと鳴った内線を電光石火の勢いで取った。
部署のみんなが注目する中、ひと言相づちを打って内線を切って起立した。
「お出でになるそうだ。出迎えてくる!」
そう言って慌てて部署から出て行ったのは、午後二時をまわったときである。
経理課内は大掃除した後のようにピカピカで、いつも山のように書類が積まれている課長のデスクも整理整頓されている。
いつもこのくらい片付いていると、行方不明になった伝票を探すなどの無駄な仕事がなくなるのに。
毎回探すのを手伝わされる亜里沙としては、この状態を維持してほしいと切に願う。