擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

「それに、このような質素な茶器で入れたお茶でも、雄大さんと一緒ならば極上の玉露にまで進化いたしますわ」

 うふふと口元に指先を添えて笑う連城からは、彼に対する多大な愛情が感じられる。

 それに苗字ではなく名前呼びだ。かなり親しい間柄なのだろうけど、彼は彼女を苗字で呼んでいる。そのアンバランスさが奇妙だと思えた。

 亜里沙が言われていた通りに彼に続いてソファに座ると、終始笑顔だった連城の表情がスッと硬くなった。

「雄大さん。ぶしつけですけれど、この方はどなたですの? 秘書をこの場に同席させるなんて感心いたしませんわ」

 目が合った途端に放たれたきつい口調は、あきらかに亜里沙を敵とみなしていた。

 キッと睨まれ、亜里沙はひゅぅっと心臓が縮み上がった。美人が怒ると迫力がある。

「この女性は秘書じゃありませんよ。この方は恋人の河村亜里沙さん。私の妻になる人ですから、今回の同席を願ったんです」

 ──ええ!? 今、なんて言いました? 妻って??

 驚きのあまりに口をパクパクさせている亜里沙と同様に、連城も唇をわなわなと震わせている。

「どういうことですの!? 私と雄大さんは、結婚を前提にお付き合いを始めるんじゃありませんの!? だから今日は婚約者として社員へのお披露目をするために、会社にお呼びくださったのでしょう!?」

 興奮してまくしたてる連城とは反対に、彼はすこぶる冷静だ。
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