擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
これだけ冷淡に拒絶されているというのに、連城は諦める気配がない。彼への愛情ゆえなのか、女性としてのプライドか。
なんだか気の毒にも思える必死さに唖然としていると、彼に肩を抱かれた。そのまま引き寄せられてそっと頬に手が添えられる。
見つめてくる瞳には甘い獣の輝きがあった。連城に向けていた冷ややかさはなく、愛しいものを見つめる目だ。リゾート地での夜と同じ眼差しで……。
──え、この状況は……まさか。
「亜里沙、心から愛してる。結婚しよう。今すぐにでも」
「は? ちょ……っ」
ストップ、という言葉を遮るように唇が重ねられた。
そうだった……彼が実際に愛情を表現するときは、触れてくる優しさとは裏腹に割と強引なのを思い出した。
連城が見ているというのに、場所が会社だというのに、彼のキスは手加減なしの本気モードに入っていった。
絡み合う音が耳の中で響き、彼の熱い吐息が亜里沙の平常心を奪う。こんなの駄目だと思うのに、だんだんと意識が蕩けていく。
彼の上着のどことも分からない部分を掴み、ただされるがままになっていた。
「こんなの、こんなのって、ないですわ!」
バタバタと走る靴音がして、バタンッと、とてもお嬢さまとは思えないほど乱暴にドアを閉める音がし、連城が出て行ったことを知る。
その音にハッと我に返った様子の彼が体を起こし、亜里沙を離した。
「ごめん、つい、抑えられなくて……気分直しにお茶をもらおう」