擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
彼が内線でお茶を所望している間、亜里沙はソファに押し付けられて乱れていた髪を手ぐしで直した。
──さっきの言葉は本気じゃないよね。連城さんに諦めさせるために、ああ言ったんだよね?
彼とはリゾート地で知り合って、たった今再会したばかりだ。どう考えても電撃的過ぎる。本気で言ったとしても気の迷いとしか思えない。
間もなくお茶が運ばれてきて、テーブルの上にあった連城の湯呑を下げていく。
しんと静まった部屋の空気の中、亜里沙は胸をドキドキさせていた。
反対に彼はお茶を飲んだことで、落ち着きを取り戻したように見える。
「あの、さっきの行為で、彼女は諦めるでしょうか?」
「うん、そうあってほしいけど、もしかしたら無理かもしれないな。とにかく思い込みが激しい人なんだ」
どうするか。そう言いながらも彼は落ち着いているように見える。
「これで矛先が亜里沙に向くかもしれないから、それが少し心配だな」
「ええっ、それは怖いですっ」
「接点さえ作らなければ大丈夫だよ。きみは心配しなくていい」
彼が落ち着いているのは、亜里沙に危害が及ばないことを確信しているからか。
でも亜里沙の背中がぞわぞわと震えて冷汗が伝う。そういえばほんの少し前、社長に呼ばれたと知った時も同じ状態になったのだった。
横領疑惑。あれが些細な出来事に思え、そっちの方がよかったような気になる。
いやいや、そんなことよりも!
ストーカーっぽい連城が、この先どう出てくるのか。ヌードの写真を『毎晩見て』などと言う人だ。