擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
もしも諦めていないなら、どんな手段を使ってくるか分からない。
彼の言う通り、亜里沙が安全だとしても、彼がどんな目に遭うか分からないのだ。
あんな人がいるなんて、人生初遭遇だ。
──ああ、もう、夢なら早く覚めて。
「きみもお茶を飲むといいよ。少しは落ち着くから」
「……はい」
勧められて一応湯呑を手にとってみたものの、いろんなストーカー事件を思い起こしては手が震えてしまって、とても口に運ぶ気になれず、早々にテーブルに戻した。
──どうしよう、どうしよう。ほんとにどうしよう?
心中には同じ言葉が溢れ出て、半ばパニック状態。こうして座っていられる自分を褒めたいくらいに、ほんのわずかな間に吃驚仰天なできごとが起こっている。
リゾート地で会った彼がYOTUBAの社長だったことだけでも驚きなのに、ストーカーされているだなんて。
「急に巻き込んだ形になって、ごめん」
彼が真摯に頭を下げるから、つい亜里沙は言ってしまう。
「そんな、大丈夫ですよ。ちょっとびっくりしただけですから」
そう言って微笑みを向けると、彼は安心したように肩の力を抜いた。
「でも香坂さんは大丈夫なんですか? ストーカーって怖いですけど」
「俺は自分の身を守る術は持ってるから平気だよ。それに、亜里沙は不安に思わなくていい。もしも連城が襲ってきたら、俺が命に代えても絶対守る。大丈夫だから」
「命って、どうしてそこまでしてくれるんですか……?」
「亜里沙は俺の妻にしたい、唯一の女性なんだ。だから、何者にも、指一本たりとも、触れさせるつもりはないよ。だから安心して」
彼は真剣な眼差しできっぱりと言うから、とても頼もしく感じる。ひょっとして、ストーカーされることに慣れているのか。
彼は四つ葉グループの御曹司であるうえに、ルックスもモデル並みなのだ。今までの人生の中で、同じようなことなかったとは言い切れない。
でも、何度も耳にする言葉『妻』というのは、本気で言っているのだろうか。