擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「あの、さっきの一連の言葉は、いったいどういうことなんでしょうか?」
意を決して、おずおずと尋ねてみた。
本来ならばもっと問い詰めたいところだけれど、相手は亜里沙よりもずっと立場が上の人である。
プライベートならばまだしも、会社にいる今の状況下では、とても強気には出られない。
亜里沙の問いかけに対し、テーブルの上に湯呑を置いた彼は表情を変えずにさらりと言ってのける。
「どういうことって……さっききみが聞いた通りだよ。だから、今日にでも引っ越しておいで」
「は? 引っ越しって……! まさか、本当の、本気なんですか!?」
──そんなことってある? しかも今日って……。
亜里沙は思考不能に陥って、テーブルに視線をさまよわせた。
「当然だよ。こんなこと冗談で言う奴はいない。それに、その方が亜里沙を守りやすいから、一緒に住んだ方がいいんだ。俺に責任を取らせてくれないか」
つい十分ほど前まで連城に見せていた険しい表情とは裏腹に、なんとも優し気に笑う。
たしかに冗談で『引っ越しておいで』などと言う人はいないかもしれない。いやそれ以前に彼は、もっと耳を疑うようなことを言ってのけたのだった。
それも第三者の前で堂々と。
しかもキスもされてしまったのだ。
「それに一緒に暮らしてる事実がないと、またストーカーしてくるかもしれない。とにかく諦めが悪いんだ」
「それは……困りますよね」
連城と接したのはほんのわずかな時間だったけれど、そうとうな執着心があるように思えた。
でも急すぎる。
──断る余地はある?