擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 ふと考えるけれど、さきほどまでのやり取りを思い返せば……拒否できる可能性は限りなくゼロパーセントに近い。

 彼のことは好き。

 けれど住む世界が違い過ぎて、すぐに壊れそうな予感がする。だからこそ、なにも告げずに去ったのに。

「そんな……どうして私なんかと?」

 困惑した面持ちで彼の整った顔を見つめる。

 凛々しくも形の整った眉の下にある瞳は黒目がちで、高い鼻梁に薄目の唇が外国の俳優のような甘さを醸し出している。

 彼の立場に加えて、この見惚れてしまう容姿ならば引く手あまたに違いない。現実その場面を今さっき体験していたのだから。

 それなのに、何故平凡でなんの特徴もない亜里沙が、彼のハートをここまで射止めてしまったのか。

 突然降ってわいた事態に思考が追い付かず、亜里沙の頭の中では疑問符ばかりが踊る。

「仮に、連城の件がなくても、俺と一緒に住むことは、きみにとってもまったく問題ないと思うんだ」

 そう言いながら立ち上がった彼が亜里沙の隣に移動してくる。ソファのクッションがわずかに揺れて、亜里沙の体が震えた。

「観光案内の縁結び神社に、愛の絆を深める池。あのご利益は俺にあったんだ。おかげで亜里沙と愛を深められた」

 縁結びの幸の水神社──あそこでは亜里沙も一心不乱にお願いしたのだった。

 ご利益が即行現れるのは、就職難での内定で証明済みだ。
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