擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
ということは、結ばれた縁は香坂雄大であって、ほかの誰でもない。
「きみも嫌ではなかった……それよりは、俺と同じ思いだと感じたけど、違うか?」
「それは、そう、です。けど……」
そうでなければ、素のままで身を委ねることなんてできない。
亜里沙が恥じらうように答えると、彼は安心したように笑った。
「もう、あのときみたいに逃がさないよ」
整った顔がふと動いて、亜里沙の耳元にぐっと近づく。
「あの夜のことも、忘れたとは言わさないから」
顔だけでなく、声までもが甘くて、つい体がぞくぞくと震えてしまう。肩をそっと抱かれて手をぎゅっと握られると、亜里沙の胸の鼓動が跳ねあがった。
「あれは、その、覚えてますよ……もちろん」
亜里沙とて忘れる筈がない。それほどに、彼は強烈な思い出をくれたのだから。
「突然過ぎて戸惑う気持ちも分かっている。だから、しばらくは擬似結婚でいいから」
──擬似結婚……つまり、仮の妻になるということ?
「俺と一緒に暮らしてほしい」
好きな人にお願いされるように言われて、こんなに求められて、断れる女性はいるのだろうか。
でもそれでも確認しておきたくて。
「香坂さんの理想と、違うかもしれませんよ?」
「構わないよ。俺の望みは亜里沙とともにいることなんだ。きみの不安を消すためにも、仮の夫婦から始めよう」
「……はい……よろしくお願いします」
亜里沙は彼の仮の妻になることを了承した。