擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 みんなの口から飛び出す言葉は様々で、亜里沙は茹蛸のように染まった頬を隠すのが精いっぱいだ。

 ──擬似結婚なのに、こんなふうに公表しちゃうってアリなの? もしも関係が壊れてしまったら、どうするつもりなの?

 後ろを振り返って見上げると、彼はすました表情でざわめく社員たちを眺めていた。その視線が亜里沙に向けられて目が合うと、優しげな瞳になってうれしそうに微笑む。

 ──そんな顔されたら、なにも言えなくなっちゃう。

 亜里沙はときめく胸をなだめるように押えてうつむいた。

「発表は以上だ。各自仕事に戻ってくれ。無駄な作業をせず、効率よく。私がここに来たからには深夜に及ぶ残業は辞さない。みんなそのつもりでいてくれ」

 少し冷たさを含んだ張りのある彼の声は、みんなの浮ついた気持ちを一気に鎮める力があった。

 ──やっぱり業務改革にきたみたい。

 それでも恵梨香を含めて興奮さめやらぬ面持ちの女子社員が数名いるけれど、各々デスクに向かって仕事を始める。

「さあ、亜里沙も仕事だ。それで……今日の経理処理が終わったら、俺のところに来て。食事に行こう。そこでこれからの生活のことを相談するから」

 彼の手のひらが肩から離れてそっと背を押され、デスクに戻る。

 満面の笑顔でもの言いたげに亜里沙を見つめる恵梨香を横目にし、落ち着かない気持ちを抱えながら残りの仕事を片づけた。

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