擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
亜里沙は哀しくなった。会社で結婚宣言をした翌日には破局が訪れるなんて、身に起こることがアクティビティにもほどがある。
「やっぱり無理かな」
「違うよ、亜里沙」
「え?」
「俺が問題だと思ったのは、亜里沙が自分の魅力……俺がきみを妻にしたいと思った理由を全く分かっていないことだよ」
「妻にする理由?」
『性格のかわいらしさや、食の好き嫌いがないこと、一緒にいると楽しくて癒されること。そのほかに、相性も含まれてる』
頭に浮かぶのは昨日寝室で彼が言ってくれたこと。
けれど……女子の誰もが持っている資質だと思え、どれも決定打にかける気がする。
「亜里沙は、俺に合わせようとして見栄を張ることもなく、欲望に満ちた目で見てこないし、媚びる態度も取らない。きみは無意識かもしれないけど、飾らずにそのままの自分を見せようとしてくるんだ。今も、そうだよ」
確かに亜里沙は自分を偽っていない。彼に珈琲をかけられたときからずっと、まっすぐすぎるくらいにありのままだ。
欲望に満ちた目……は、正直持っている気がするが、ほかの女子よりも弱いってことなんだろうか。ギラギラ目ではなくギラ目くらい?
「だから、たかだか家事ができないくらいでは、がっかりしないよ。生活レベルの違いも気にしなくていい。無理に合わせようとしない亜里沙を好きになったから」