こんなにも愛しているのに〜それから

樹より茉里へ

「よろしければ、
何かお飲み物をお持ちいたしましょうか?」

読書灯の下で
手帳を開き、考え事をしていた俺に
CAさんが囁くように声をかけてくれた。

「あぁ、ありがとうございます。
申し訳ありませんが、温かいお茶をください。」

「はい。畏まりました。しばらくお待ちください。」

空の上で
お茶を飲みながら、
茉里に深野と会ったことを
知らせようと思った。

面と向かっては言えないヘタレな俺だ、
メールにしよう。

今は
多分これからも
あの日の深野と俺との間に起きた
犯罪にも思しきことは
あまりにも醜くて言えない。

しかし
俺からではなく
周りから
あの日
会っていたという事実を
知らされたら
茉里もいい気持ちがしないのではないか。
と思った。
いくら
離婚の意思が堅いとしても。

俺は
メールを打ち始めた。
1行書いては消し、
また1行書いては消し、
悩みながら
言葉を選びながら書くメールは
なかなか先へと進まない。
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