離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
差し出された千景の手に百々花が躊躇いながら自分の手を重ねると、返されたのは思わず見入ってしまうくらいの優しい笑み。心拍のリズムが大きく乱れた。
「そんなに緊張しなくていい。相手も人間だ」
もう片方の手を胸にあてて心臓を宥めていると、千景は父親に会うから身体を固くしていると思ったらしい。でも、そのほうが好都合だ。千景の行動にどぎまぎしていると思われるのは避けたい。
「はい、そうですね」
そう答えたものの、目を細めて見つめられているため、百々花はさらに心拍数を稼ぐばかり。少し先に控える父親よりも、今、目の前にいる千景の存在のほうが悩ましい。
そんな様子を見かねたのか、千景が不意に百々花をそっと引き寄せる。以前、社長室で抱きしめられたときよりも躊躇いを感じさせる、優しい手つきだった。
真綿のようにやわらかな感覚の腕に包み込まれ、無意識に息を止める。
このまま時が止まればいいのに――。
そう願うほどの愛しさを瞬間的に感じた。
「行こうか」