離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
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ミーティングを終えて千景が社長室へ戻ってすぐ、秘書の美園が執務室をノックして顔を覗かせた。
ワンレンボブを耳にかけ、メガネのフレームを指先で持ち上げる。毎日決まって黒かグレーのスーツは皺のひとつもなく、目鼻立ちのすっきりとした美人だが隙がない。
「社長、広告代理店の方から営業のお電話が入っているのですが」
「それなら広報部に回してくれ」
答えながらプレジデントチェアに腰を下ろす。
「それが広報部から回ってきたんです」
「広報部から?」
千景はデスクに両肘を突き、美園を見上げた。
彼女によれば、何度となく営業の電話をよこす代理店で、広報部で持て余しているらしい。〝社長と直接話をさせてほしい〟としつこく食い下がるそうだ。
「わかった。代わってみるよ」
美園が一礼して出ていくのを見届けてから、千景はデスクの受話器を持ち上げた。