離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
先ほどのミーティングの資料を軽くまとめて立ち上がると同時に、父の弘和がゆったりとした足取りで中へ入り、まるで自室のようにソファに腰を下ろした。
間もなく還暦を迎える弘和は、白髪の混じったグレーヘアだが目立った皺がないため若々しい。昔から眼光が鋭いと言われる千景だが、それは父親譲りである。
昨年、母親が病気で亡くなり父と子のふたり家族だが、別々に暮らしているため顔を合わせるのは月に一度がいいところ。
美園がお茶を淹れて下がると、弘和は背もたれに身体を預け、くつろいだ状態で口を開く。
「香織さんとの縁談の件だが」
またそれかというのが正直なところだった。
このところ頻繁に電話でその話を聞かされ、少しうんざりし始めている。
「その話なら断ったはずです」
向かいのソファに座った千景は、ため息交じりに返した。
「そうはいくか。うちの大事なクライアントでもあるし、彼女の父親とは旧知の仲だ」
弘和が軽く一蹴する。