離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
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なんとなくそのまま帰宅する気分にならず、千景は香織を自宅まで送り届けた後、再び車を走らせた。
やって来たのは、たまにひとりでふらっと立ち寄るホテル、ル・シェルブルのラウンジ。車はホテルに置いたまま、帰りはタクシーで帰ろうとエレベーターで最上階まで向かう。
いつものようにカウンター席へ向かうと、そこに百々花の姿を見つけた。
ここで会うとは思いもせず、一瞬人違いかと思ったが、友人らしき隣の女性のほうに向けた横顔はまさしく彼女だった。
「百々花さん」
声をかけてみたが気づかない。
よほど楽しいお酒を飲んでいるのか、クスクスと笑い肩を揺らしていた。
「百々花さん」
懲りもせずもう一度呼ぶと、今度は声が耳に届いたのか、ゆっくりと百々花が振り返る。千景を見て、慌てて背筋を伸ばした。
「流川さん……! こ、こんばんは」