離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「大丈夫か?」
「は、はい……」
こくんと頼りなくうなずき、百々花はゆっくりと千景を見た。
「……今、結婚って言いました?」
画面でも切り替えるかのように、パチンと一度まばたきをしてから彼女が確認する。その瞳はアルコールのせいか、潤んでゆらゆらと揺れている。
「家を出たいなら、いい提案だと思わないか?」
「ですが、流川さんにはなんのメリットも……」
「あるよ。父親に無理やり結婚をさせられそうになっていてね」
それも、かなり厄介な相手との。
百々花は忙しなくまつ毛をまたたかせた。
「でも、結婚がいやなら私が相手でも同じではないですか?」
「ある種の契約、とでも呼べばいいのかな。ほとぼりが冷めたら離婚してもいい」
結婚してしまえば、父親も香織も諦めるだろう。それが狙いなのだ。
我ながら短絡的な考えだとは思うが、彼らをかわすにはこれしか方法はない。