キミに伝えたい愛がある。
齋藤さんとタクシーで帰る途中、私は少しだけ昔話をした。


りっくんとは実家が近所だったこと。


高校まで一緒だったこと。


りっくんが私の良き理解者だったこと。


何かあったらすぐさま駆けつけてくれたこと。


齋藤さんは終始黙って聞いていた。


そのお陰で私は記憶と気持ちをきちんと折り畳み、心の奥の箱に入れることが出来た。


だけれど自分の気持ちを思い出しもした。


話しているうちに、やっぱり好きだったんだと気づかされた。


そしてそれは今でも変わらない。


それは分かる。


でも、私が好きでいて良いのだろうか。


また周りの人を傷つけたりしないだろうか。



「愛宮さん好きなんだね、速水さんのこと...」



アパートまでの最後の曲がり角で齋藤さんはボソリと呟いた。


私は頷いた。


否定は出来ない。


こんなに人を好きになったのは後にも先にもりっくんしかいないのだから。



「気持ちはちゃんと伝えないと伝わらないよ。愛宮さんは優しすぎるの」



確か似たようなことをりっくんにも言われた気がする。



「愛宮さんの人生は愛宮さんのものなんだから自分で未来を掴み取らなきゃ」



...変わらないと。


このままで良いわけない。



「この辺りですか?」


「あっ、はい」



私はタクシーから下りる前に齋藤さんに言った。



「私...頑張ります」



拳を握り、ファイトのポーズをした齋藤さんが私の目に色濃く焼き付いた。


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